"State of OSH in the EU-Pilot Study(『EUの労働安全衛生の状況−パイロット調査』)"は、15加盟国の多数の関係者による多大な努力の成果である。各国のネットワークと関連団体などが、データの収集、マニュアルへの回答、国別報告の作成に参加し、EUの労働安全衛生の状況のとりまとめに尽力した。こうしたデータ収集のプロセス自体が、完了した調査の長所の一つである。
今回のパイロット調査は、EU内の労働安全衛生監視システムを確立するための第1段階であった。これにより、EU全域のきわめて幅広い情報源からのデータを照合するうえでの問題点が明らかになった。にもかかわらず、この過程で非常に有意義な情報が得られたのであり、この報告書はその質的な要点を包括的にまとめたものである。
報告書には、以下のような長所と欠陥がある。
長所:
■ EU内の労働安全衛生の状況について、事実に基づく質的な要点を包括的に提示している。
■ もっともリスクが高いと指摘、検討された産業についての貴重な情報を提示している。
欠陥:
■ 本調査では量的なデータを得ることがきわめて困難であった。
■ 一部の加盟国では質的なデータが不足する分野があったため、専門家の意見を回答に代えた場合があった。
統合した情報の分析から得られた価値ある情報だけでなく、調査の実行それ自体からも、こうした国境を越えた調査の実施に伴なう限界について有意義な情報が得られた。これらの限界については本報告書のなかで詳細に述べている。その要点は、定義と解釈、モデル回答からのかい離、情報不足、無回答の取り扱いなどである。
欧州安全衛生機構は、今回の調査を評価し、今後の調査でのプロセスと方法を改善するため、パイロット調査の評価プロジェクトをすでに開始した。パイロット調査のすべての関係者に対し、データの収集と統合の過程での経験と意見を提起するよう要請する。具体的には国内ネットワーク・パートナーの参加、国別報告作成のための取り組み、遭遇した問題点、パイロット調査の方法論などについてである。また指標の信頼性、国別報告の付加価値などについても評価プロジェクトで検討する。