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調査・研究

調査研究概要

食品加工作業における効果的なリスクアセスメントの進め方に関する調査研究報告書のポイント

本調査研究の趣旨・目的

本調査研究においては、これまでリスクアセスメントのノウハウの蓄積がなく、製造業における労働災害の約3割を占める食料品製造業を中心に、スーパーなどのバックヤードを想定した小売業や飲食店業を含めた「食品加工作業」におけるリスクアセスメントの進め方等について検討した。食品加工作業特有の作業を洗い出し、洗い出した作業についてリスクアセスメントを実施し、業種別又は作業別の実施例を示すとともに、具体的なリスクアセスメントの進め方を示した。

リーフレットPDF(PDF 2,150KB)

実施内容

  1. 調査研究における検討事項
    本調査研究については、委員会を設置し、食品加工作業について災害の状況を収集し、当該作業におけるリスクアセスメント及びその低減措置について検討し実施例を作成した。また、リスクアセスメント実施記載例を作成するため、食品加工作業において活用できるリスクの基準表(頻度、可能性、重篤度、リスクレベル)について、安全衛生に精通していない人でも理解できる表現の仕方の検討も併せて行った。
    また、リスクアセスメントに積極的に取り組んでいる2事業場を選定し、実地調査を行い、事業場におけるリスクアセスメントの実施状況やその効果、今後の課題等について確認した。
    さらに、これまでリスクアセスメントの取組がされていない食品加工作業の事業場を対象に、普及啓発を図るために、リスクアセスメントの基本的な内容、実施目的や効果、実施手順等さらには、演習問題を盛り込んだリーフレットの作成を行った。
  2. 対象業種・作業
    食料品製造業(肉・乳製品製造業、水産食料品製造業、パン・菓子製造業、その他の食品製造業(調味料、弁当等))、小売業(スーパー等)、飲食店業(調理・加工等)における食品加工作業を対象とした。

食品加工作業におけるリスクアセスメントの特徴

食品加工作業は、多岐にわたる分野に分かれていて、その中でさまざまな作業形態があり、他の製造業とは異なった様相を呈しているが、食品の貯蔵性・保存性を重視した加工作業と食品の特性変化を重視した加工作業に分けられている。また、2008年の経済産業省の「工業統計表」によると、全国各地に分散している事業所(作業者10人以上)数ではわが国最大の事業であることが分かる。個々の企業規模は小さくほぼ90%が従業員300人未満の企業となっている。

近年、乳製品や冷凍食品に起因するトラブルが多発して、業界全体で消費者の健康維持確保が最大のテーマとなっているが、その原点は食品を取り扱う加工機械や作業者の衛生面の充実が第一義とされ、食品加工作業における従業員の安全衛生活動は、衛生管理に重点が置かれている。一方、従業員の作業形態を考えると、実際にはかなり危険を伴う作業も多く、衛生面の充実に加えて、従業員の安全の確保もまた大きなテーマである。

食品加工作業においても、他の製造業と同じく機械化やITを取り入れた装置の普及が目覚ましく、従来型の災害に加えシステム化によると思われる災害も増加しつつある。平成7年4月に示された「食品加工用機械の労働災害防止対策ガイドライン」(労働省、現厚生労働省)によると、食品加工機械の安全ガード、動力遮断装置、非常停止装置、操作装置、電気装置、油圧装置及び空気圧装置、その他の装置の基準が設けられていて、混合・混練・破砕・粉砕、ロール圧延、成形・圧縮、切断・切削、供給・送り・圧送、コンベヤー、熱加工等の装置の機構についても安全作業確保のための規制を行っている。

職場では、上述のようなさまざまな機械・装置を使い作業が行われているが、床面が常に濡れていて滑りやすい状態にある、効率化による一人作業が増えている、食料品を取扱う点で時間の制約を受けて作業をしている等々従来よりも多くの困難を伴い危険性有害性にさらされている状態である。そこでリスクアセスメントを導入することにより、安全で快適な職場を形成していく必要がある。

リーフレットの内容

食品加工作業におけるリスクアセスメントの実施例を収録するとともに、具体的なリスクアセスメントの進め方を報告書から抜粋しリーフレットにまとめた。

事業場内で相互理解を深めることができるように、演習問題として「運搬作業」「おにぎり成型作業」を例に、実際にリスクアセスメントを行う材料として、イラストシートと演習用紙を掲載している。