中災防の個人ばく露測定

中災防の個人ばく露測定 ~リスク見積り測定と確認測定~


化学物質のばく露の程度を最小限度とするには、必ずしも実測しなくても、使用量や作業状況を考えて労働者の呼吸域の濃度を推定することができます。しかし、推定には制約や限界があるので、簡易リスクアセスメントツールなどでうまくいかないときは、労働者の呼吸域にサンプラーを装着して、作業時間中の平均濃度を実測すること(リスク見積り測定)も広く行われています。
特に、濃度基準値が設定された178物質(令和7年10月時点)については、事業者は、労働者のばく露の程度を濃度基準値以下としなければなりません。濃度の推定で把握しきれないときは、確認測定を行いましょう。

*リンク先のモデルSDS(厚生労働省職場のあんぜんサイト)は、更新日時点での基本情報として利用ください。濃度基準値については、厚生労働省の濃度基準値リストで直接確認する必要があります。
 中災防テキスト(化学物質管理者選任時テキスト第4版化学物質の自律的管理の基本とリスクアセスメント第2版)には、全ての濃度基準値設定物質に関し、CAS番号、濃度基準値、試料採取方法、分析方法、皮膚等障害化学物質への該当についての一覧表を掲載しています。

1)濃度基準値設定物質(178)

*令和7年10月1日適用の告示に対応しています。

*捕集方法、捕集後の検体の保存や輸送の状況により、分析をお引き受けできないことがあります。
また、サンプリングに必要な捕集剤や分析用の試薬、消耗品には、海外からの輸入品もあります。輸入手配の状況により、サンプリングの日程や、分析実施時期の調整をお願いすることもあります。

2)発がん性が明確で濃度基準値を設定できないとされた物質(9)

*測定すべき濃度の下限値が低いなど、サンプリングや分析に制約があり、お引き受けできないことがあります。

3)その他の物質の例

法定の有機溶剤、特定化学物質、その他の金属など個人ばく露測定の需要があるもの

  • ナトリウム塩

※その他の物質については、中災防分析部門に直接お尋ねください。

リスクアセスメント対象物に対するリスクの見積り測定、または技術上の指針に基づく確認測定をご希望の方は、中災防の作業環境測定士を派遣しますので、地区安全衛生サービスセンターまでお問い合わせください。

また、中災防では、これまで10年余にわたる国のばく露調査事業の成果を踏まえ、サンプリングのみを実施する作業環境測定機関に対し、分析業務を引き受けて支援しています。支援を必要とする作業環境測定機関の担当者は、労働衛生調査分析センター(TEL:03-3452-3145)または近畿・大阪安全衛生総合センター(TEL:06-6448-3788)まで直接ご相談ください。

手間をかけずに、簡便な個人ばく露測定をしたいとき

個人ばく露測定は、通常、作業環境測定士が立ち会い、作業状況を把握しつつ、ポンプや測定器具などの状況を随時確認しますので、手間や費用がかかります。しかし、

  • 建築工事などで、作業者にサンプラー器具やポンプの装着が困難な場合
  • 研究施設などで、外部の測定者の立入りが望ましくない場合
  • CREATE-SIMPLEによるばく露推定結果が予想外に高いなど、検証してみたい場合

などもあります。揮発性溶剤については、小型(直径3cm厚さ5㎜程度)のバッジによる簡易測定・分析をする方法が確立されていますので、一度お試しください。

濃度基準値設定物質

令和7年10月1日時点で、リスクアセスメント対象物のうち濃度基準値が設定された178物質を製造し、または取り扱う業務を行う屋内作業場においては、事業者は、労働者のばく露の程度を、濃度基準値以下とする必要があります。従来のような特別則の下での管理濃度(作業場所の作業環境の良否を判断する管理上の指標)とは異なり、濃度基準値を超えてのばく露は法令違反となり、健康障害のおそれがあるとして、漏洩事故における大量ばく露と同様に、リスクアセスメント対象物健康診断(第4項健診)を速やかに実施する義務が課されます。

労働者のばく露の程度は、リスクアセスメント対象物の取扱量や作業方法に応じて、労働者の呼吸域の濃度を計算により見積もることによっても把握できます。また、事業者(化学物質管理者)が明らかに低いと判断できる場合など、必ずしも実測が必要とはされていません。
しかし、国が公示する技術上の指針によれば、事業者による労働者の呼吸域の濃度の見積り等により、8時間濃度基準値の2分の1を超えると判断される場合は、労働者の呼吸域の濃度を実測する「確認測定」をするよう定められています。

確認測定の結果、呼吸域における濃度が濃度基準値を超えた場合の措置としては、密閉化、換気装置の設置・稼働、管理的対策など様々なものが考えられ、呼吸用保護具の使用も選択肢の1つとなります。呼吸用保護具によるばく露防止措置を講ずる場合は、保護具着用管理責任者を選任し、保護具の適正な選択、使用と保守管理を管理させなければなりません。また、法令の義務付けはありませんが、技術上の指針で、フィットテストについても規定されています。

詳しくは、濃度基準値が定められた令和5年厚生労働省告示第177号および技術上の指針(令和5年技術上の指針公示第24号)を参照ください。これら確認測定の実務については、令和6年5月8日改正分を含め、化学物質管理者選任時テキストに掲載しております。

リスクの見積り測定と確認測定の違い

個人ばく露測定のサービスは、安衛法第65条に規定する作業環境測定の対象以外の物質に対して、労働者の呼吸域における物質の濃度を測定するものです。ばく露低減のためのリスクアセスメントの一環としての個人ばく露測定、濃度基準値設定物質に対する確認測定の2つがあります。

種類 リスクの見積り測定 確認測定
対象 リスクアセスメント対象物
(濃度基準値設定物質を含む。)
その他の化学物質
濃度基準値設定物質
利用例 簡易ツールでうまくいかない場合 呼吸域濃度が8時間濃度基準値の2分の1を超えるリスク見積りとなった物質
精度 測定実施者が妥当性を判断 作業環境測定士の関与による精度担保が望ましい

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中災防は、個人ばく露測定を担う方を養成するため、個人ばく露測定講習を実施しております。
また、企業内で開催する化学物質管理研修に専門スタッフを講師として派遣することもできます。

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