化学設備等における非定常作業の安全(2015年3月)

ガイドラインを踏まえた対策の検討

化学設備の非定常作業における安全衛生対策のためのガイドライン(1996(平成8)年6月10日基発第364号)は、1994(平成6年)度に当協会でまとめた「非定常作業における安全衛生対策に関する調査研究(化学設備)」を基に策定されたものである。

化学業界では同ガイドラインに沿って労働災害防止対策を進めているところだが、ガイドライン策定以来20年近くが経ち、その間の世界経済の急速な変化による社会構造の激変や、それに伴う労働環境を取り巻く状況の大きな変化は、産業設備の高経年化、現場をあずかる管理者や技術者、作業者の技術伝承や人材育成の遅れ等と相まって、化学産業における事故やトラブルの多発を招いている状況にある。

さらには2011(平成23)年3月に発生した東日本大震災等の直接的、間接的影響もあり、特に近年では、わが国を代表する化学会社において重大事故が複数発生し、化学物質を取り扱うその他の業種や事業場でも重大な事故が発生している。

そこで同ガイドラインを踏まえ、多くの業種への展開を図ることも念頭に置きつつ、安全衛生対策の検討を行うこととした。

実施内容

ガイドラインを踏まえた対策の検討にあたって、近年の化学工業の災害情報の収集を行い、現状や課題等について確認した。さらに、参考となる資料を収集した。

概要

  1. (1)ガイドラインを踏まえた対策の見直し案の構成
    1. 目的
    2. 用語の定義
    3. 対象とする非定常作業
    4. 元方事業者、関係請負人等の責務と横断的安全衛生管理体制
    5. 作業の実施前準備と事前評価
    6. 作業実施時における安全衛生管理体制の確立
    7. 作業計画書の作成と承認系統、関係者間の相互連絡、確認
    8. 作業実施にあたっての留意事項及び安全措置
    9. 作業実施時の作業許可と確認の流れ
    10. 緊急事態への対応
    11. 定期的安全衛生教育における非定常作業に係る教育とパトロール

    そのほか、実際に事業場で安全衛生対策の内容を実践する際に参考となる資料や災害事例を紹介している。

  2. (2)主なポイント
    1. 作業の実施前準備と事前評価について(リスクアセスメント)
      非定常作業前におけるリスクアセスメント(図1)およびリスクの低減措置の実施について、災害要因別に具体的な低減措置の事例を示した。
    2. 元方事業者、関係請負人等の責務と横断的安全衛生管理体制について
      非定常作業の安全確保の上で、一つの事業場において元方事業者、関係請負人等の責務を明確化し、元方事業者自らの安全衛生管理体制と関係請負人の安全衛生管理体制を含んだ横断的な管理組織を確立することは重要であることに言及した。
    3. 参考資料の掲載
      安全衛生対策を事業場で実施するための参考となる資料を23件掲載した。
    4. 災害事例を収録
      近年発生した非定常作業時の災害事例12件について、災害発生状況および原因と対策についてまとめたものを収録した(図2)。