安全衛生教育促進運動実施要領

1. 趣旨

安全衛生教育促進運動は、労働者の安全と健康を守る上で中核となる安全衛生教育についてその重要性を啓発し、実施を促すため、平成25年度から中央労働災害防止協会が主唱し、推進している運動である。

安全衛生教育は、労働者の就業に当たって必要な安全衛生に関する知識等を付与するものである。特に、労働安全衛生法に基づく雇入れ時教育、作業内容変更時教育、職長等教育、危険有害業務従事者に対する特別教育等(以下「法定教育」という。)の徹底や就業制限業務に係る資格取得の確実な実施は労働災害を防止する上で極めて重要である。近年では高年齢労働者および外国人労働者が増加しており、労働者の多様化が進む中、安全衛生教育の重要性はますます高まっている。

昨年5月に成立した労働安全衛生法および作業環境測定法の一部改正によって、職場のメンタルヘルス対策の強化、化学物質による健康障害防止対策等の推進や機械等による労働災害防止の促進、高年齢労働者の労働災害防止の推進などの措置が定められた。

法令改正により令和8年10月から個人ばく露測定の実施には、作業環境測定士であっても別途、必要な講習の受講が必須となる。化学物質の自律的な管理が進められる中、職場における危険・有害な化学物質管理の重要性に関する意識の高揚を図るため厚生労働省と中央労働災害防止協会は令和8年2月に「第2回化学物質管理強調月間」を展開する。対象となる事業場は、業種や規模を問わず労働者に必要な法定教育の受講を徹底するとともに、化学物質を製造または取り扱うことに起因した労働災害を防止することについて、より一層積極的に取り組むことが求められる。

また、令和8年4月から高年齢労働者の労働災害防止を図るため、高年齢労働者の特性に配慮した作業環境の改善、作業管理などの必要な措置を講ずることが事業者の努力義務となる。中でも、高年齢労働者が再雇用や再就職等により経験のない業種や業務に従事する場合には、特に丁寧な教育訓練を行うことなどが求められる。

さらに、令和8年1月からフォークリフトなどの一定の機械に対して義務付けられている特定自主検査について、基準を定め、特定検査業者はこの基準に従って検査を行わなければならないこととされた。
事業場の安全衛生水準の向上と主体的な安全衛生活動の取り組みのためには労働者の安全・健康に対する意識の定着が重要である。経営トップとして、安全衛生に係る管理者、作業者等、各層に応じた知識と技能の習得の機会、法定教育のみならず法定外の教育も欠かせない。

事業者は、教育・研修の対象者が増える年度初めに向け、計画的に準備を進めて着実に実施していただきたい。各事業場において、安全衛生教育の重要性を改めて認識し、その積極的な実施を促すため、本年度も安全衛生教育促進運動を展開することとする。

2. 実施期間

令和8年2月1日から令和8年4月30日までとする。

3. 運動標語

「正しい知識で 職場を安全・健康に!」

4. 主唱者

中央労働災害防止協会

5. 後援

厚生労働省

6. 実施者

各事業場

7. 主唱者の実施事項

主唱者は、次の事項を実施する。

  1. (1)機関誌、Webサイト等、さまざまな媒体を通じての広報
  2. (2)リーフレット等の制作および配布
  3. (3)「安全衛生教育実施チェックリスト」の本運動実施期間中の集中的な配布
  4. (4)「安全衛生教育相談窓口」の設置および安全衛生教育相談の集中的な対応
  5. (5)ポスター等の掲示
  6. (6)安全衛生関係団体等に対する協力依頼
  7. (7)事業者団体、中小企業団体、経営者団体等を通じた、本運動の事業場への周知
  8. (8)その他、安全衛生教育に関する事業場への支援・協力

8. 実施者の実施事項

各事業場は、特に次の事項を実施する。

  1. (1)年間の安全衛生教育実施計画の作成、これに基づく安全衛生教育の計画的かつ効果的な実施
  2. (2)安全衛生教育の実施結果の記録・保存
  3. (3)実施計画の作成、実施、実施結果の記録・保存など安全衛生教育に関する業務の実施責任者の選任
  4. (4)法定教育等の徹底
    1. 新入社員(パート・アルバイト、派遣労働者を含む)に対する雇入れ時教育
    2. 配置転換により作業内容に変更があった者に対する作業内容変更時教育
    3. 危険有害業務に新たに従事する者に対する特別教育
    4. 職長等に新たに就任する者に対する職長等教育および職長等の能力向上教育の推進
    5. 就業制限業務、作業主任者を選任すべき業務での免許所有者や技能講習修了者などの資格者の充足
    6. 安全衛生業務従事者(安全管理者、衛生管理者、安全衛生推進者、衛生推進者、安全推進者等)を選任・配置するための教育等
    7. 危険有害業務従事者に対する教育、安全衛生業務従事者に対する能力向上教育
    8. 化学物質管理者教育、保護具着用管理責任者教育
  5. (5)法定教育以外の教育等の充実
    1. 労働安全衛生マネジメントシステム、リスクアセスメント、機械安全に関する教育
    2. 危険予知活動(KYT)に関する教育
    3. 健康保持増進措置を実施するスタッフを養成するための専門教育
    4. 産業保健スタッフ等に対するメンタルヘルスケア推進のための教育・研修
    5. 感染症の予防・対策に関する教育
    6. 熱中症予防に関する教育
    7. 騒音障害防止に関する教育
    8. 腰痛予防のための教育
    9. 健康の保持増進のための健康教育
    10. 職場のメンタルヘルス対策及びハラスメント防止のための教育・研修
    11. 職場の救命処置及び応急手当に関する教育・研修
    12. 経営トップ等に対する安全衛生セミナー
    13. 管理職に対する安全衛生教育
    14. 高年齢者の労働災害防止と身体機能の維持向上のための教育
    15. 外国人労働者に対する母国語や明解な図示などを活用した安全衛生教育
    16. 情報機器作業従事者および管理者に対する労働衛生教育
  6. (6)eラーニングを活用した安全衛生教育の適切な活用と推進
  7. (7)資格または特別教育等が必要な設備機器、作業場所等に対して、その必要な資格または特別教育の種類を掲示することや、有資格者に腕章を装着させることなど、安全衛生教育に関する「見える化」の推進
  8. (8)講師、教材等の問題から、自ら安全衛生教育を実施することが困難な場合の、安全衛生関係団体等の活用による安全衛生教育の実施