安全衛生相談員コラム
(とある労働者50人未満の事業場のAさんと、安全衛生相談員とのやりとりです)

Aさん
全国労働衛生週間が始まります。今年のスローガンは「ワーク・ライフ・バランスに意識を向けて ストレスチェックで健康職場」ですね。

相談員
そうですね。今年の5月に公布された労働安全衛生法等の改正により、労働者50人未満の小規模事業場に対してストレスチェックが義務付けられました。施行日は公布後3年以内に政令で定める日です。

Aさん
ストレスチェックは医師が実施するのですか?労働者数50人未満の小規模事業場は産業医の選任義務がないですが、ストレスチェックを実施するために医師を探さないといけないのでしょうか?

相談員
ストレスチェック制度において、医師が関与する部分は「実施者※1と面接指導する者」となります。実施者は医師、保健師、研修を修了した看護師等でよく、面接指導は産業医の資格を持つ医師が望ましいとされています。
ストレスチェックの委託業者に依頼することも考えられます。また、面接指導については、地域産業保健センターに相談してはいかがでしょう。地域産業保健センターは、独立行政法人労働者健康安全機構が設置しており、労働者数50人未満の小規模事業場の事業者や小規模事業場で働く労働者を対象として、保健指導・長時間労働者への医師の面接指導などの産業保健サービスを提供しています。

Aさん
ストレスチェックの実施者となれるのは医師等とのことですが、実施のための回答結果の入力やリポートの印刷等の事務処理は、だれが行っても良いのですか?

相談員
事務処理をすべて実施者が行う必要はなく、実施者の指示のもと「実施事務従事者※2」が行うことができます。「実施事務従事者」には、資格などは必要ありませんが、労働者の人事に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者はなれません。 また、守秘義務が課せられます。

Aさん
ストレスチェックの調査票はどのようなものが良いのでしょうか?

相談員
ストレスチェックの調査票は、①ストレスの原因に関する質問項目、②ストレスによる心身の自覚症状に関する質問項目 、③労働者に対する周囲のサポートに関する質問項目の3つの事項に関する質問が含まれていることが必要です。なお、調査票として「職業性ストレス簡易調査票」が推奨されています。
厚生労働省ホームページ「
ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等」に無料で利用できる資料を掲載していますので、参考にしてはいかがでしょう。

Aさん
ストレスチェック結果の評価はどのようにすればいいでしょうか?

相談員
ストレスチェックの結果は、周囲の人に見られないように適切に回収、保管するなどして管理してくださいね。
結果の評価は、事業者が産業医などの実施者の意見等を踏まえて定めた評価基準に従い、実施者が行います。

Aさん
実施者が結果を評価した後は何をすればよいのですか。

相談員
評価後には、評価結果を実施者または実施事務従事者から遅滞なく本人に通知しなければいけません。通知すべき内容は、①調査項目ごとの点数、②ストレスの程度(高ストレスに該当する否か)、③加えて、実施者は、高ストレス者の中から自覚症状が高い者や、自覚症状が一定程度ありストレスの原因や周囲のサポートの状況が著しく悪い者がいれば面接指導対象者として選び、選んだ場合は評価結果を本人に通知する際に、面接指導の対象者であることを伝え、面接指導を申し出るように勧奨します。

Aさん
面接指導の対象者から申し出があった場合、医師が面接指導を行った後事業者は何もしなくていいのですか?

相談員
事業者は、面接指導が実施された後、面接指導を行った医師から就業上の措置に関する意見を聞き必要に応じて、また、その労働者の実績を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の就業上の措置を検討することになります。

Aさん
労働者にとって、ストレスチェックを受けることにより自らの状態を知ることができ、セルフケアのキッカケになりますね。

相談員
そうですね。また、事業者にとっても、労働者がメンタルヘルス不調になることを未然に防止できるなど意義は大きいと思いますので、3年以内の施行日を待たずに、準備を進め早めに実施してはいかがでしょう。
令和7年9月
中小規模事業場安全衛生相談窓口
※1「実施者」
実施者は、事業者が選任し、制度を実施します。実施者になれるのは、医師、保健師、または厚生労働大臣が定める研修を修了した看護師、精神保健福祉士、歯科医師、公認心理師です。ストレスチェックを受ける労働者の昇進、異動など人事に関する直接権限を持つ者は実施者になれません。
※2「実施事務従事者」
実施事務従事者は、事業者が選任し、実施者の指示により実施上の事務的なこと(個人の調査票データ入力、結果の出力または結果の保存等を含む)を行う者をいいます。ストレスチェックを受ける労働者の昇進、異動など人事に関する直接権限をもつ者は実施事務従事者になれません。ただし、健康情報を取り扱わない事務については可能です。
ご案内
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