キャンペーン・募集

STOP!熱中症
クールワークキャンペーン

令和6年 STOP!熱中症 クールワークキャンペーンによせて

 あるビルの建設現場での話です。梅雨明けの炎天下の中、その現場では屋上に防水のためのアスファルトを敷く作業を行っていました。アスファルトは窯で熱せられ、作業員たちはやけど防止のため長袖の作業服の袖を留め、ヘルメットを着用していました。その作業は、本来ならもっと涼しい時期に行うはずでしたが、長引く梅雨のため工期が切迫し、炎天下での作業となってしまいました。現場では、30分ごとに休憩し、水分を補給する等誰もが熱中症対策に細心の注意を払っていましたが、熱中症による死亡災害が発生しました。懸念していた屋上の防水工事の現場ではなく、日が差さない地下の現場で清掃員が被災しました。その清掃員は60歳代で高血圧の持病がありました。
 熱中症は厄介な疾病です。その対策の難しさの第一は「いつ、どこで発生するか予想が難しい」ということです。墜落災害ならば、「墜落危険個所で働いている作業員」が被災しますが、熱中症の場合は、「同じ場所で同じ時間働いている作業員」であっても、ある人は何ともありませんが、ある人は被災します。体力のない高年齢者や基礎疾患のある人、たまたまその日体調の悪い人は発症のリスクが高くなります。だから管理者が自分を基準にして、「室内のWBGT値も、休憩・給水もこんなものでいいだろう」と安易に考えてしまうと、災害が発生してしまうケースがあります。対策には科学的データの裏付けや産業医等の専門家の助言が必要です。
 また、熱中症は重篤災害になりやすい災害です。厚生労働省から発表された「令和5年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況(速報値)」によると、令和5年の熱中症による死傷者数は1,045人であり、同年の労働災害(休業4日以上の死傷者数)発生数133,169人(令和6年3月速報値)の約0.8%ですが、平成25年から令和4年までの熱中症災害(確定値)の死亡率(死亡数/災害総数)は約3.2%であり、これは令和5年の労働災害全体の死亡率(速報値)の約6倍となります。
つまり、“熱中症は、発生すると重篤災害となる可能性が高い”
ということで、事業場では、熱中症になったら、重篤災害を想定しなければなりません。
 熱中症が重篤であるかを見極める判断としては、「意識障害」が起きているかどうかが重要となります。意識障害の有無については、産業医・保健師等の専門家の判断が重要となります。しかし、そのような専門家がいないケースについて、消防署の救急隊からこんなアドバイスをもらいました。
 「意識障害が起きているかどうかのひとつの判断基準として、熱中症で気分の悪くなった人に未開栓のペットボトルを渡してください。その人が自力で封を開け、ペットボトルの中味を飲めるようなら涼しいところで休憩させ様子を見てください。ペットボトルを開けられないようなら、すぐに救急車を呼んでください。」
 熱中症対策としては、休憩や給水等を中心とした健康管理が一般的で、個人用保護具等についてはまだまだ手探りで各メーカーが開発中で絶対防げるというものがありません。各事業場としては、災害防止対策として安全管理体制を充実させるとともに、非常時の病院等への連絡体制も確立させることも必要です。

令和6年4月
中小規模事業場安全衛生相談窓口

厚生労働省の補助事業として、中小規模事業場が抱える課題や悩みの解決をお手伝いする「中小規模事業場安全衛生窓口」を設けております。安全衛生の専門的知見やノウハウを持った専門家が無料でアドバイスいたします。お気軽にお問い合わせください。

本コラムの全部または一部の加工や切り取り、商用利用は禁じます。事業場の安全衛生活動にお役立てください。